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私たちの棲むところ essay

日出づる処
・・・気候と風土 其の壱

「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙なきや、・・・・・」
これは、かつて聖徳太子が当時の中国である隋の皇帝に宛てた手紙の一部ですが、「日が昇る国の皇帝が、日の沈む国の皇帝に手紙を送ります。お変わりございませんか?」という意味のことを云っています。
この「日出づる処」からも想像できるように、日本はアジアやヨーロッパの国々が集まる巨大なユーラシア大陸の東の端に位置しています。また周りを海に囲まれた島国で、その東にはこれまた大きな太平洋という大海原が控えています。
そういう大きな陸と海に挟まれるという稀な地理的条件と、温帯にあることから、私たちの住む日本は四季の移り変わりが特徴的で美しく、恵まれた自然環境を有しています。

この四季を演出してくれるひとつに、モンスーンと呼ばれる季節風があります。
海面と陸地の暖まり方の違いによって発生するこの風は、夏は太平洋から暖かく湿った空気を運び、豊富な雨をもたらしてくれますし、冬には大陸から冷たく乾燥した空気を運んできます。途中、日本海を渡るときに水分を含むことで、日本列島の日本海側では雪が降りやすくなりますが、そこで再び水分を失い、太平洋側では木枯らしが吹いたりします。太平洋側と日本海側で気候に違いがあるように、南北に細長く、山々の連なる日本列島では全国津々浦々で多種多様な気候が見られます。
冬に底冷えし、夏は蒸し暑いところ。雪がたくさん降るところ。一年中よく晴れるところ。冬に晴れる日が少ないところ。雨のよく降るところ。常に風の強いところ。などなど・・・。最近では、ヒートアイランド現象という、都市部で夏に異常なくらい気温が上がる、人工的な条件で起こる気候までみられます。
さて、皆さんはどんなところにお住まいでしょうか・・・。

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豊かな森をもつ日本は水資源に恵まれ、農業や漁業を始めとする様々な産業が営まれています。

家づくりにおいては建築しようとする地域の気候を知ることが、まず第一歩だと考えます。
例えば、積雪量の多いところと、ほとんど雪の降らないところでは、家のカタチ、特に屋根のカタチは変わって当然だと思いますし、冬場、気温の低いところや、日照が少ないところでは、そうでないところに比べて暖房や断熱などに対する配慮も変わってきます。風が常に強いところでは、開口部の位置に気を配る必要もありそうです。
さらに同じ地域でも、その土地の周囲にある山の配置や起伏の形状、近くを流れる川との関係、田園地帯か住宅地かということでも気候条件は変わってきます。
このようなことから、家づくりにとりかかる時は気象データや地形図を調べる以外に、実際に敷地に立って観察したり、その周辺を散歩したり、地元の人に尋ねてみたりして、その土地の性格を知ることから始めることになります。

かつて住宅の設計を仕事とする専門家がいなかった時代、家づくりは、その土地に根付いて生活し、その土地のことを熟知していた大工をはじめとする職人たちと住まい手との共同作業の上に成り立っていました。
また、そうした家づくりの積み重なりは、その土地の地形と、その気候に適した動植物と、それらがモトになった産業などが組み合わさって、その土地固有の美しい風景をつくっていました。そのようなもの全ての集合体を、私たちは「風土」という言葉で呼んでいます。
日本は気候が多様なため、そこから生まれる「風土」も多様です。その多様性が、日本の住環境や食生活に深みを与えていると云えるのではないでしょうか。現在、社会の状況は大きく変わり、地域ごとの多様性が少なくなりつつありますが、家づくりに関わるひとりとして風土に寄り添う姿勢を忘れてはならないと考えています。

(2008年12月 記、2017年3月 修正)

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豪雪地の古民家の佇まい

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果樹園の広がる川沿いの地域